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2013年1月10日木曜日

新島の師匠




















新島に伝わる盆の供養踊り・若郷大踊りの、手様(てよう)の師匠が昨年末、亡くなりました。

2006年、新島の博物館で夏休みを利用した子どもたちのワークショップを手伝ったとき、放牧舎のメンバーは新島の北部にある若郷集落に寝泊まりしていて、夜は大踊りの保存会の練習に参加させてもらっていたものでした。
本番では男性のみが踊る踊りですが、練習ということもあってか師匠は女である私たちも気さくに迎えてくださって、踊りに欠かせない扇も、鞄のなかから何本も取り出しては一人一人に貸してくれました。

滞在中にちょうど台風がやってきて、海が大荒れの日、師匠にゆっくりお話を聞かせていただく機会がありました。戦後に途絶えかけた大踊りを、記憶を頼りに復活させたこと、それよりもっと前の、子ども時代のやんちゃな話……。
夏場は漁に急がしい時期、荒れ狂う天気に「もどかしいでしょう?」と聞いたら、「島の人間は、諦めがいいんだ」とニコニコとおっしゃった師匠。離島が初めてに近かった私は、天気が悪くなるとすぐに交通手段が断たれ、さながら島に閉じ込められたようになる環境になかなか馴染めないでいました。だけど、師匠のその軽やかなひと言に、何かが腑に落ちた気がしたのです。

師匠とは一昨年、両国でお会いしたのが最後になりました。いつもの毛糸の帽子を被った、お姿で。